日本語のアクセント入門:高い・低いとはどういうことか
日本語のアクセントでいちばんの壁は、難しさではなく、母語の感覚(強弱アクセントや声調)をそのまま当てはめてしまうことです。日本語のアクセントは、思っているよりずっと単純です。どの拍も高いか低いかの2段階だけで、ルールもほんの少ししかありません。この記事ではそのルールと、辞書にある ⓪①②③ の数字の読み方を説明します。
まず、母語の感覚をいったん捨てる
英語のような言語では、単語の中の一つの音節を強く長く発音します(名詞の REcord と動詞の reCORD のように)。中国語やベトナム語のような声調言語では、音節の一つ一つに声調がついています。日本語はどちらとも違います —— アクセントは単語全体のもので、その単語の中で「どの拍の後で下がるか」を表します。かな1文字だけでは、アクセントは決まりません。はの音は、箸では高く、橋では低くなります。といっても、はの音が変わったわけではありません。2つの単語で、下がる位置が違うのです。
2つの鉄則
- 1拍目と2拍目は、必ず高さが違う。低く始まって2拍目で上がるか、高く始まって2拍目で下がるか。最初の2拍が同じ高さで始まることはありません。
- 一度下がったら、もう上がらない。1つの単語の中で、音が下がるのは多くても1回。下がったら語の終わりまで低いままで、下がってまた上がることはありません。
この2つのルールのおかげで、覚えることは1つだけになります:何拍目の後で下がるか。辞書の数字が示しているのは、まさにこれです。
⓪①②③ の読み方
| 記号 | 名前 | 意味 | 使用例 |
|---|---|---|---|
| ⓪ | 平板(へいばん) | 下がらない。低く始まり、2拍目で上がったら語の終わりまで高いまま。後ろの助詞まで高い | 桜が さくらが |
| ① | 頭高(あたまだか) | 1拍目の後で下がる。高く始まり、後ろはすべて低い | 箸が はしが |
| ② | 中高(なかだか)/ 尾高(おだか) | 2拍目の後で下がる | 橋が はしが |
| ③… | 中高(なかだか)/ 尾高(おだか) | 3拍目(n拍目)の後で下がる | 卵が たまごが |
気をつけたいのは橋②と端⓪です。単語だけなら、どちらも はしと読むので、単独では違いが聞こえません —— 違いが出るのは後ろの助詞:橋がのがは低く、 端がのがは高い。だからアクセントを練習するときは、助詞までつなげて練習することが大切です。単語だけを読んでいても、尾高と平板の違いは身につきません。
練習のしかた
- 単語を調べたら、数字をちらっと見てから声に出す。ルール表を暗記する必要はありません。単語に出会うたびに、下がる位置を一つずつ覚えていけば、量がやがて質に変わります。
- 助詞までつなげて読む。理由は上のとおり —— ⓪と尾高の違いは、助詞にしか現れません。
- ミニマルペアで耳を鍛える:箸 / 橋、雨 / 飴、神 / 紙。聞き分けられないうちは、急いで言おうとしないこと。聞き分けが先です。
- 東京式を基準にする。辞書や教科書が示しているのは、どれも東京式(標準語)のアクセントです。関西式は仕組みが違うので、初めのうちは混ぜて聞かないようにしましょう。
最後に正直なことを一つ。アクセントを間違えても、日本人はたいてい理解してくれます。文脈で補えるからです。それでも練習する価値があるのは、「日本語らしく聞こえるかどうか」をいちばん大きく左右するのがアクセントだからです —— でも、不安になる必要はありません。話す前に何度も確認して、話せなくなってしまうのは本末転倒です。
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